倒産体験日記

倒産社長のリアル体験日記

破産(倒産)に関わる人物と用語説明

会社が破産した時、聞きなれない言葉や様々な人物が登場してきます。

初めての事で分からない言葉も多いと思いますので、このブログ内でもよく出てくる言葉や人物を簡単にまとめてみました。

1:登場人物

まずは、破産に関わる人物です。

債務者

債権者に何らかの行為をする義務(債権)がある人・法人。

「借入金の返済」、「家賃の支払い」、「物品の購入代金の支払い」、「給与の支払い」、「物品の提供」等、債務を尾行する義務のある「人・法人」にあたる方は債務者と呼びます。

債権者

支払いを受ける(資産を預けている)法人・個人

債務者に対して金銭の請求を行う事が出来る人・法人のこと。

債権を受ける権利のある人で、債務者と逆の立場にある人です。

申し立て代理人

破産する経営者が自ら選んで委任する弁護士であり、自分の代理人弁護士。

裁判所へ自己破産の手続きを代理で依頼したり、介入後は初めに債権者との間に入って取り立てや、通知等対応をしてくれます。いわゆる味方の弁護士でもあります。

私の場合は、申し立て代理人弁護士とその他に補佐役として2名の計3名の弁護士が就きました。そのうちの日々の打ち合わせや、提出資料内容についての問い合わせなどは主に補佐役とやり取りが多く、節目節目で申し立て代理人が出席する事がほとんどでした。

破産管財人

裁判所から任命され、破産する法人・個人の資産を管理・調査・現金化し、債権者へ配る弁護士。

「敵」というイメージがありますが、立場の基本は債権者と債務者の中立的立場

債権者に対して資産の保全・現金化を行い配当を行う事や、債務者の今後の生活の為に自由財産の拡張依頼があった場合、裁判所へ意見陳述をしてくれます。

私の場合は、破産管財人と補佐役の2名の計3名の弁護士が就きました。(申し立て代理人の数と同人数になりました。)

※申し立て代理人と破産管財人は会社の規模・複雑性によってこのようにチームを組まれることが多い。

2:用語

弁護士介入

申し立て代理人が債権者との間に入り、債権者へ告知書を送付します。おおまかに、代理人となりましたので債務者への直接の連絡はしない様、伝えてくれます。

破産手続き開始の申し立て

債務者の「自己破産手続き開始」を裁判所へ求める申し立て手続き。

支払が出来ない状態になっても、何もせずに破産手続きが始まるわけでなく、申し立てを行う事で破産手続きの開始を求める事が必要です。その後要件を審査して「破産手続開始決定」へと続いていくことになります。

申し立て日

破産手続きの申し立てを裁判所に手続きをした日ですが、事業を停止した日を指すことが多いです。いわゆるX-DAY

また、事業を停止した旨を債権者に告知する日であったり、弁護士が介入した日を同日となる事が多いです。

破産手続き開始決定

以前は「破産宣告」と呼ばれていました。

表現がキツイ為名前が変わったそうです。

破産手続き開始の申し立てを裁判所が受理し、要件を審査します。

要件を充たしていると判断をされた場合に、裁判所から「破産手続開始決定」を発せられ、自己破産手続きの正式な開始となる。

「この方は破産したので財産を破産管財人が現金化して皆様に配る手続きをしますよ」、的な感じ。この時点で法人・個人の資産は破産管財人の管理下に入ります。

免責

法的に借金がチャラになる事です。

破産手続きが終了しただけでは債務者は債務の返済義務を免れる事は出来ません。

この義務を免れるためには、債務の支払い義務を免除する決定を裁判所からもらわなければなりません。その手続きの事になります。

免責によって債務者の経済的な立ち直りを助ける制度

非免責債権

負債が免責された場合でも、特定の債務は免責されないものがこれにあたります。

税金、故意や悪意で与えた不法行為に基づく損害賠償請求権慰謝料養育費罰金債権者名簿に故意に記載しなかった債権等

債権者集会

破産管財人が債権者に対し、地方裁判所にて、裁判所の管理下のもとに定期的(約3ヶ月に1回)に開催される集会。

私の場合は、破産手続開始決定の通知が債権者に届いたと同時に、債権者集会の日時が決まっていました。

出席者

1.破産者(債務者)

2.代理人弁護士(申し立て代理人)

3.破産管財人

4.裁判官

5.債権者

実際は、債権者の出席は多くないとの事がネット上で多く見かけますが、個人の自己破産の場合はそうかもしれません。法人が破産した場合の、特に1回目は多くの取引先や金融機関が出席する事が多いそうです。

※私の場合は、この記事を書いている段階ではまだ債権者集会が開催されていませんので、自分がどうだったかは後日ご報告いたします。

内容

破産手続き開始決定が出されると、破産管財人が選任されます。

管財人は、債務者の資産や債務の状況を調査・換価していく事になります。

その進捗状況や調査結果・配当の見込み等を報告し、債権者はそれらの内容で不明点があれば質問が出来ます。

実質は質問はほとんど無く、淡々と説明が終わり、時間は15分程度で終わることが多いそうです。

未払賃金立替制度

会社が倒産したことにより、労働者が賃金未払いの状態のまま退職を余儀なくされた場合に、独立行政法人である労働者健康安全機構が、その倒産した企業に代わって労働者に対して未払の賃金の一部を支払う公的制度。

※実際に会社が倒産した場合は賃金が未払いのまま解雇されることが多いです。

労働者側で手続きが出来ますが、会社で書類の作成・提出する事が通常です。

私の場合も、書類作成をしてから破産管財人経由で提出しました。

要件

・事業主が破産、民事再生、特別清算等や、事実上の倒産状態である事について労働基準監督署長の認定があった事。

・事業主が、労災保険の適用事業者をして、1年以上の期間にわたって労働者を使用して事業を行なっていたこと。

・未払いがあった期間中に、事業主に雇用され、労働基準法上の労働者として勤務していたもの。

・事業主が破産、民事再生、特別清算等や、事実上の倒産状態である事について労働基準監督署長の認定の申請前6か月前の日から2年間以内に退職したものであること。

・その賃金が定期賃金・退職金であること。

・退職日の6か月前から立替払請求日までの間に支払期日が到来する未払賃金である事。

・未払額が2万円以上であること。

などなど、色々とあります。

注意点としては解雇予告手当、賞与、福利厚生費、通勤費は含まれません

そして、支払い額は未払額の8割です。

役員報酬

取締役の役員報酬については対象外であり、他の一般債権と同様に扱われます。

また、取締役でもない家族従業員がいる場合も注意が必要です。

事業主の居住及び生計を一つにする同居親族は原則労働者に該当しない”と定められています。

認められるためには、事業主の指揮命令にしたっがている事が明確であり、他の労働者と就労実態が同様であり、賃金もこれに応じて支払われている事が条件となります。

予納金

破産手続きをする際に、裁判所に支払う費用の事。

実際、この費用の大半は破産管財人の報酬に充てられるそうです。

金額は会社の規模や、複雑性によって変わっていきます。

よくネット上に、倒産時の費用で調べると弁護士費用が記述や質問をされている事が多いですが、予納金と弁護士費用に2種類の費用が掛かるので注意が必要です。

破産決断前や直前にしておくと良い事など~法人

破産手続きを進めていく中で、事前に準備をしておけば良かったと感じたことをまとめました。この記事は特に会社の手続についてまとめています。

X-DAYは債権額が一番少ないタイミングで

「破産のタイミング」。これは会社の現金が無くなったり、支払いが出来なくなるタイミングの話ではなく、債権額が少ない時期についてお話しします。

私の会社は小売業であり、時季によって繁忙期と閑散期がはっきりしている業種でした。

繁忙期→取引額増

閑散期→取引額減

当然ながらこうなります。

私の場合は1か月早く倒産の決断をしていれば、取引先の被害が大きくならずに済んだのです。

「破産の決断」は以前にお話ししたとおり、なかなか冷静には考えられないと思います。しかし、‟破産”の文字が現実的に頭を過ぎった場合はそのタイミングによっては、取引先の恨みを小さくできる事も出来ます。

キャッシュばかりではなく、このタイミングも見極めてX-DAYを設定しましょう。

取引先の担当者を把握しておく

破産手続きを進めていく中で、申し立て弁護士から依頼される準備書類に「債権者一覧表」があります。

私はエクセルで表にして作成しましたが、債権者名・郵便番号・住所・TEL/FAX・債権額・担当者の記載を求められました。

破産申し立てや、破産手続き開始決定の通知書は会社あてに送付されるため特段、担当者名は重要ではありませんが、その後の破産管財人が債権者と債権について連絡を取るときに必要になります。

ある程度把握しておかないと、その度に管財人から連絡が来て大変な場合もあるので、再度、取引先担当者一覧表は確認しておくとよりスムーズに進むと思います。

会社と会社の取引には、仕入先・出店先のテナント・各種の業者など様々な業態の会社があり、担当部署の社員がそれぞれ担当者と業務取引をしています。

取引先によってはコロコロ担当が変わる場合もあるので、常に担当者のアップデートしてあるか確認しておくと良いと思います。

従業員の退職手続き書類の準備

会社が破産した場合も通常時と同様に退職にまつわる書類作成を会社が作成・提出しなければなりません。雇用保険や社会保険の資格喪失届、住民税の異動届など従業員数に比例して作業は膨大に増えていきます

私の会社は社労士に依頼をして入退社の手続を行っていました。

しかし社労士への報酬も債権となっていましたので、この手続きはお願い出来ません。なので、自分でやるしかないのです。

弁護士事務所へ相談に行き破産の決意を決めたら、申し立て代理人弁護士からはX-DAYまでに準備する膨大な資料作成の依頼があります。

その中には、従業員の退職に関する書類がありませんでした。

私の場合は弁護士からX-DAYまでの日数が少なく申し立てに必要な書類のみでしたが、ある程度ゆとりがある方は、退職に関する書類を作成しておく事でその後の手続きも少しは楽になると思います。その中でも特に、雇用保険の離職票です。

氏名・住所・保険番号・賃金支払い対象期間や賃金額、タイムカードの履歴や記入箇所等が膨大にあります。

従業員の失業保険のスピーディーな申請にも必要になるので、事前に準備しておくと良いと思います。

書類整理

あえてここで触れる事でもありませんが、各種契約書やリース物件一覧、旧通帳や雇用契約書に労務規定など社内・社外と結ぶ契約関係の書類は常日頃から整理整頓が必要です。

案外とあちこちの書庫に入っており、いざ探すとなると時間が掛かる場合があったり、どの契約書があったか忘れている事があります。

破産手続きの申し立てをする際は、全ての契約書や労務関連書類等、膨大な量の提出物を弁護士に渡すことになります。保存場所などは再度確認しておくと良いと思います。

特に私の場合は2代目・両親が急死した為に先代からの契約書等あるか無いかを聞く事も出来ず、把握するのにも大変でした。

細かい取引は停止しておく

小口の取引は事業を営んでいる以上常にあると思います。

小口で取引額が少なくても、破産申し立てをした段階で債権者となります。

債権者数が多ければ多いほど、債権者一覧表の作成の手間や対応が増えていきます

普段と変わらない業務で、社内と社外に感づかれない様に破産申し立ての準備が必須になりますが、業務に影響がない範囲で細かい取引は止めておくと後の作業の軽減にもなります。

破産決断前や直前にしておくと良い事など~個人

私自身が破産手続きを進めていく中で、普段から事業を営んでいるときにこうしておけば良かったと思った事や、事前に準備しておけば良かった事などをまとめました。

役員報酬について

家族経営や小規模の会社を運営している社長は、妻など家族を役員にしている事も多いと思います。

社長は会社の借入金の連帯保証人になり、資金繰りが厳しい時は個人の資産を会社に入れる為に、社長自身の報酬を高くしておき、いざという時の為に貯金をしている方も多いと思います。

しかし、社長自身の報酬が高いと社会保険料や税金など結構な額が引かれます

私の会社は妻を役員にしており、役員報酬は扶養の範囲内でした。

今思えば、妻の報酬を高くしておいて私自身の報酬をもっと分散しておくべきでした。

社長はどんなに稼いで貯金を蓄えたとしても、会社が倒産すれば連帯保証人である社長の資産はほんのわずかな現金を残して没収されてししまいす。

妻に自身の報酬を分散する事で、結果的に所得税、社会保険料、住民税など様々な税金関係が抑えれ手元に残るお金は増える事になります。また、いざという時には妻の財産は守られるため破産後の生活資金の確保にもなります。

よく「資産運用はリスクの分散」と言われます。

それぞれのあらゆるバランスを考えながら、役員報酬の配分に対しては検討してみるべきだと思います。

家族名義の資産にしておく

倒産し、社長自身も自己破産をすると自分名義の資産は破産管財人により現金化されてしまします。

家族の大黒柱でもある私自身は、普段の支払いや買い物や各種ローンなどほぼすべて私名義の契約やカードを使用していました。

社用車とは別に自家用車を保有しローンを組んでいました。

私自身が破産すると、もちろん没収されます。

この事から、上記で記載したように妻の役員報酬を上げて妻がローンを組んだり、現金一括で購入していたら妻名義の車になります。こうしておけば、家族との思い出が詰まった車を残せました。

また、趣味や高級家電などにお金を使う家庭であれば、これらも妻が購入した履歴があると残せるようになります。

自宅については、妻名義で購入するのはそこそこのハードルが上がりますが、可能であれば自宅も守る事が出来ると思います。

ここで気を付けておくのは、旦那の収入を妻名義の口座に頻繁に移していたりお金の出処が曖昧だと破産管財人に否決される可能性がありますので、妻と自分のお金はハッキリと分けておくことをおすすめします。

家族カードを作っておく

自己破産するとクレジットカードは没収、10年近くは作れなくなります。カードに紐づいていたETCカードも同じです。

私の会社は妻も役員にしていた為、倒産すると2人共無職になります。

無職だと自己破産をしない妻であってもクレジットカードを新たに作るにはハードルが上がります。

事前にクレジットカードを妻名義で作成しておき、家族カードを作っておけば私が自己破産してもその家族カードは没収されません。

今の時代、クレジットカードが無いのはかなり不便なのは皆さん承知の通りかと思います。ネットや普段の買い物等、キャッシュレス社会です。

私自身法人・個人で複数のプラチナカードやゴールドカードを持っていました。見栄も欲しくて、一生懸命クレジットヒストリーを磨いてやっと手にしたステイタスカードもあえなく没収となるのです。

クレジットカードが無いと何かと不便な世の中ですので、事前に家族カードを作っておくことは後の不自由ない生活に大きく役立つ事となります。

ポイントは貯めておく

クレジットのポイントや普段お買い物しているお店のポイントなど、あらゆるお店でポイントサービスを設け、顧客の囲い込みをしています。

破産した時、現金は99万円以上は没収されます。しかも、しばらくは収入が無く家族名義の貯金や収入をあてにして生活する事となります。

その時に、日常のお買い物で役立つポイントは貯めておいた方が良いでしょう。

‟本来”はポイントも資産として申告しなければいけません。それも含めて99万円を超えると没収されます。私の場合は残った現金も破産手続きで残額が無かったので、ポイントはそのまま保有していました。

家電量販店やドラックストア、妻名義で購入していたスーパーのポイントなど、これらのおかげで相当救われました。また、クレジットカードのポイントで交換した商品券などにも子供の衣料品購入などに使えました。

いざという時の為に、これも家族名義でポイントは使わずにひたすら貯めておくのも良いかもしれません。

消耗品は日頃からストックしておく

私は以前に自然災害に遭い、停電を経験しています。

その時に感じたのは、地域一帯が同じ災害に遭うと全ての人が買い物難民になる事です。お金があっても、商品が無いのです。その時に欲しいものはみんなが同じです。お客さんが殺到してすぐに売り切れます。オイルショックの時もそうですが、世の中の情勢によってもトイレットペーパーが売り切れたりしています。

この経験をもとに、私は非常食・電池・飲料水・ティッシュ・トイレットペーパー・シャンプーや石鹸類、台所で使う様々な用品や洗濯用品、さらにはお米は玄米で数十キロなど、様々な非常食・消耗品はかなりの量をストックしていました。

災害時に準備していたものが、皮肉にも破産後の生活に役立ちました。(ある意味家族にとっては災害と同じですが)

しばらくは消耗品にお金が掛かりません。これは、その後の生活に非常に大きな助けとなります。

破産申し立ての決意した際や準備中にやってはいけない事

申し立て弁護人との面談で、破産申し立てを検討中、準備中にやってはいけない事のアドバイスがありました。

知らずにやってしまうと、破産法違反やその行為や契約・手続き等を無効にできる権利が破産管財人や裁判所にはあります。

「破産」この言葉が現実になってきた際には下記の内容には注意しておきましょう。

 

法人

注意事項

1.一部の債権者にだけ返済をしてはいけない。

あの会社には迷惑かけたくない。

どの経営者・従業員でも会社が破産する際にこのフレーズが頭によぎると思います。

よく食事をしたとか、いつも無理を聞いてくれる、またはあの会社に迷惑を掛けたら後が怖い等、様々な理由があると思います。

もし一部の債権者だけに返済や支払いをしてしまうと優先弁済をしたとして、管財人から「否認権」を行使され、その取引自体が無効となります。かえって取引先に迷惑をかける事にもなります。最悪の場合は、免責を受けられなくなることもあるのでやめておきましょう。

2.従業員や取引先を含め第三者に話さない。

従業員説明会でとある従業員から「事前に相談して欲しかった」と言われましたが、従業員に対しては会社の破産を考えている事実を相談しない方がよいと思います。社内で伝えるのは、取締役までにしておきましょう。

事実を知ると、「失業」・「収入」・「再就職」・「毎月の支払い」等、自分の事で頭がいっぱいになり間違いなく冷静に考える事が出来なくなります。

その不安感から、一人で抱えきれず必ずそこから事実が広まっていきます。

特に担当取引先など、仲の良く付き合いの長い担当者には迷惑を掛けたくないと思うのが普通です。この事実が1社に伝わると、「あの会社は破産する」という噂が瞬く間に広がります。

破産申し立て後に非常に重要な事は、会社の資産の保全になります。

破産手続き開始決定前であれば、債権者は自社の商品や債権を全力で回収に来ます。

こうなると、社内はとてつもない大混乱になります。

最悪、会社の資産が無くなると、その後の弁護士費用や従業員の給与など優先債権の配当すらできなくなる可能性もあるのです。

破産の当事者である経営者自身が孤独で苦しく誰かに相談したくなるので、終業員が冷静に対応できる可能性は低いと思います。(中には経営者よりしっかりした幹部もいるかもしれませんが…。)

最悪、自分の保身の為にとんでもない行動に出る可能性もあります。

社員が多ければ多いほど、そのリスクは大きくなります。

X-DAYまでは、第3者に悟られない様に行動しましょう。

3.会社の資産を市場価格より安く売ってはいけない。

会社が倒産しそうなとき、資金繰りの為に様々な資産の現金化をする事があると思います。社用車を複数台所有している場合に売却したり、保険の解約、上場企業の有価証券の売却など破産の事実を知らない相手に対して市場価格で売却する事は問題ないそうですが、問題になるのは事情を知っている人・法人に資産を売却する事です。

資産を棄損したして、破産管財人に否認されることもあるそうです。それは、事情によっては、「市場価格」で売却した場合も該当する事があるので、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

4.破産直前に借り入れをしない。

破産するという事実を隠して新たな借り入れは、大変な問題になります。

「破産費用が無い。」、「生活費が無い。」どんな理由があったにせよ、返すことが出来ない(破産しようと考えている)のに新たにお金を借りる事は、「詐欺罪」になります。免責がおりなくなるどころか、犯罪者になってしまいます。

これは、絶対にやめておきましょう。

4.現金が無くなってから破産の決意をしない。

私の場合は、法人2社と個人合わせて600万円近く掛かりました

この費用が捻出できない場合、破産の手続きに入る事が出来ませんでした。

経営者が破産の決断をする事の難しさは、この立場になった人でしかわからないと思います。特に業績が良い時期を多く経験していたり、業績が長ければ長いほど決断が難しいと思います。

「来月こそは」、「来期こそは」、「ここを乗り切れば」等。

本当に根拠があり、一時的な資金繰りの状況であれば金融機関が手を差し伸べてくれると思います。

しかし、本当の姿は「単なる願望」でしか無いと思います。そのような状況に陥っている事を真摯に受け止めれば、もう会社は‟限界”という事実が理解できると思います。

根拠が無く、無駄な延命措置はかえって周りに迷惑をかける事にもなります。

ある程度現金の余力があるうちに、周りに対して少しでも影響を少なくできるタイミングを見つけて「破産」の決断をする事をおすすめします。

労務手続きと資産の現金化

 

労務手続き

破産手続きの開始決定後にまず行ったことは、従業員の労務関係資料の作成です。

ほとんど準備が出来ていない状態で破産手続に入った為、雇用保険資格喪失届、給与支払報告書、住民税異動届、社会保険料資格喪失届、未払賃金立替制度の申請書等、通常退職者が出た場合に行う手続きの全従業員分の資料作成を行いました。

もちろん、従業員が多ければ多いほど作業量が多い為、大変な作業になります。

私の場合、社労士がいましたが債権者でもある為にお願いは出来ず、私自身でこの資料作成を行いました。

これらの手続をしてからでないと、「未払賃金の立替制度*1」の手続が出来ません。

私の会社の場合は、解雇月と給与〆日が数日過ぎていた為、翌月の2か月分が対象となりました。また、立替払い制度は未払賃金の8割が対象となります。倒産に伴う解雇予告手当は賃金では無い為、この制度の対象とはならないそうです。

また、取締役等の役員報酬は対象となりません。

社長を始め取締役は責任者なので、こういう事態は保護の対象となりません。

本当に‟責任者”という立場の重みを感じました。

しかも取締役でもないが、代表者の妻や子供などもし同居している親族が社内にいた場合の給与も基本的には支給対象外となるみたいです。

2回目の従業員説明会

これらの資料を作成後、2回目の従業員説明会を破産管財人と申し立て弁護人と共に今後の年金や健康保険の切り替え・未払賃金の立替制度の説明を行いました。

従業員と顔を合わせるは精神的には辛くなります。しかし、従業員も初めての事なのでどう手続きが進んでいくのか理解をしていなかった為、丁寧に説明致しました。

2~3名程欠席者がいましたが、ほぼ全社員が出席しました。

まず私が集まってもらったお礼と、給与未払いになってしまった事について謝罪をしその後に申し立て弁護人から立替払いの説明や社会保険の切り替えの件、失業保険の件など手続きの関連について説明を行い、その後管財人から補足を行いました。一通り説明を終えると、質疑応答に移ります。

私は終始うつむいたままです。

ここで、ある従業員から私に対しての意見がありました。

内容としては、なぜ一言も相談してくれなかったのかという事です。

その方は、社歴が一番長く先代の時代から会社の管理職を担っていた方です。

私も気持ちはよく理解できます。

しかし、これは代表者にしか理解できないと思いますが、支払いが出来そうにない時や給与を払えないことが分かったとき、さらに会社が本当に倒産しそうになっているときに通常の精神状態では無いのです。

私の場合は、妻に出すら直前までは本気で相談できませんでした。

この様な時に相談しても解決策が見つかるわけもなく、それよりも周りにこの事実が知れ渡る恐怖に襲われます。

「気持ちは理解できるが相談できるわけないよ…。」

情けない話ですが、これが正直な気持ちでした。

1時間程で説明会も終わり解散となりました。

資産の現金化

会社の資産が破産管財人へと引き継がれたため、今後は管財人が資産を現金に換え債権者への配当するために徹底的に会社の資産の把握をしていく事となります。

それぞれの事業所にある資産で現金に出来る物はなにがあるのか、会社の現金の流れを徹底的に調べて、少しでも怪しい点は次々と質問されると思います。

一番早く現金化されたのは社用車です。

中古車買い取り業者等、見積もり依頼が簡単で早くすぐ買い取り先が見つかりました。

また私の事業内容は小売業でしたので、主な資産は‟在庫”でした。

有価証券は直前に現金化していましたし、事務所や店舗は賃貸、在庫が会社の資産価値としては1番だったのです。

どう処分したかというと、入札になりました。

管財人と私で在庫をまとめて買ってもらえそうな業者を探し、大手小売業から地元の問屋、メーカーなど様々な業種へ結果的に5~6社程に声を掛け、一番入札額が高い会社へ売却する事となりました。

一般的にこのような商品は、元値から相当額安く買い取られ、市場価格より安価で売りさばかれます。メーカーからすると自社のブランドが安く売られることはもちろん嫌がります。仕入先には申し訳なく、非常に悲しい想いです。

他の資産は、事務所や店舗の什器備品等です。

原状回復がそれぞれ必要になりますので、その前に事務所や店舗内のこれらを処分する必要があります。商品と同様に管財人は破産関係の依頼をよく受けますので、倒産会社の備品関係を一括で引き受けてくれる業者を何社か知っています。そこへ声を掛け一括で買い取ってもらう事となりました。

 

 

 

*1:未払い賃金立替制度~企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払いする制度。全国の労働基準監督署や独立行政法人労働者健康安全機構で制度の実施をしている。

破産手続き開始決定

 

破産手続き開始決定と管財人の決定

破産手続き開始の申し立てから2日後、裁判所より申し立て弁護人へ通達が来ました。

申し立て書類を裁判所が確認し、この会社は破産する事やむなしという判断がされたことになります。

そして、この日をもって正式にこの会社は破産したことになります。

それと同時に裁判所から破産管財人が任命されました。

会社の資産を保全し、売却等現金化して債権者へ配当の役目を担う弁護士になります。

よく、ネット上では破産管財人は敵とか厳しいとありますが、立場的には裁判所と債務者の中立的な立場にいます。

資産を出来るだけ多くの現金に換え、債務者の自立を考えるのが本来の立場であります。しかし、管財人も人間です。様々な資産の流れや状況について質問される中で、不誠実に対応すると完全に敵になってしまします。出来る限り、誠実に対応を致しましょう。

管財人の決定と同時に、債権者へ今度は「債務者への取り立て」や「資産の持ち出し」、「それらに違反した場合、法に抵触」する可能性がある内容の通知書が改めて送付されます。

そして会社の資産の所有権、私の代表取締役としての権限は全て管財人に移行します。

そう、この時点で私には何の権限も無くなるのです。

また、開始決定の数日後に裁判所から4か月後に第1回目の債権者集会の日時が送付されてきました。

それは、これから破産管財人が資産の売却等を行いその途中経過を債権者へ説明する会となります。

破産管財人との面談

裁判所から破産管財人が選任されると、代理人弁護士と一緒に挨拶・顔合わせにいく事になります。

普段の仕事中の私はスーツを着る事が無く、普段着が多いのですが、第一印象が大事と思い久しぶりにスーツを着て面談に向かいました。

私の場合は、破産管財人と他補助役の2名の計3名の弁護士体制で今後の事後処理を行う事となりました。会社の規模や事業所の数によって、複雑の案件は人数が増えるみたいです。

自己紹介もそこそこに、目の前に並んでいた管財事件の資料ファイルにたくさんの付箋が貼ってありました。すでに破産手続きの決定と共に私が提出した大量の資料中から、気になる箇所にマーキングをしていたみたいで、同席した私側の申し立て弁護士にいくつか、資料の追加や確認しておく事などを指示を出しておりました。

管財人は早口、大きな声だったので若干ビビりましたが丁寧な感じではあったと思います。また、一番の会社の動的資産である在庫の処分をまず手を付ける事を話し合います。

驚くことに、「閉店セールをやりましょう。」でした。

2~3店舗で売上が取れそうな店舗で在庫処分・現金化を兼ねて盛大にやるというのです。

店舗は資産の保全の為にネットを掛け、弁護士からの立ち入り禁止の通知書が貼られている状態です。しかも、その販売を従業員の中から選抜して今すぐ協力できるか私の方からお願いをして欲しいとの事でした。

元従業員といえど、給与を支払えなかった為に私に対する不満・不信感はある中電話をして再度店頭に立って販売のお願いをすることに、大きな抵抗感はありますが管財人からの指示です。従わなくてはならない雰囲気です。

案の定、今までとは違うテンション・口調で‟丁寧”に断られました。

心の中で「そりゃそうでしょ…」。破産した会社の店舗で最後にお客様と顔を合わせる事に抵抗もあります。給与を支払ってもらえない社長の協力は出来ない。会社が倒産したという事で、まだ心の整理がついていない状態です。接客なんて、無理でしょう。

結局、業者に一括で買ってもらう事になり2時間ほどで1回目の面談は終了しました。

取り立て

管財人が選任された後は取り立てをしてはいけないと、上記で記述しましたが正確には「金融機関」のみになる様です。仕入先等の一般的な債権者は、法的拘束力が無いようです。

しかし実際は、この時点で仕入先や業者関係からの電話は一斉に止まり、弁護士介入から2日間、電話が鳴りっぱなしの状態から突然の‟静寂”に変わりました。

破産への不安や恐怖、取引先対応など精神的に一番つらいのは「破産手続開始決定」前であり、その後は驚くほど静かな日がやってきます。

電話が鳴る恐怖・自宅に取り立てに来ないかビクビクしていましたが、この日を境にその心配はいらなくなります。

実際、数名が私の自宅近くをウロウロしたり自宅の写真を撮られたりと、かなり恐怖を感じていた為、少し安堵感が出ました。

今思えば、自宅が融資の抵当権を入れていた為、事前に競売等の現地確認に来たのかもしれません。

破産申し立て日当日

ついにこの日がやってきました。

X-DAY=破産申し立て日

この日をもって、会社は弁護士介入となります。

膨大な量の申し立て資料、資産の保全、従業員説明会の計画準備を弁護士と入念に行い、当日を迎えます。

従業員説明会

まずは、朝一に全従業員に貸会議室に集まってもらいました。

欠席者は数名と、遠方地の店舗スタッフの10名弱。

コロナ過でもあり、事務所では‟密になる”為に広めの会議室を借りました。

従業員が提示に続々と集まってきます。

私の心境は、胃液が口から吹き出てきそうな感じと申し上げておきます。

出席予定者が全員集まったところで、弁護士から開始の合図があり私の口から本日付で会社は破産する事、それに伴って解雇する事を申し上げました。

私は途中で涙があふれ、言葉が出てこない状況でありましたが、従業員は、ただ静かに聞いていました。

私からの話が終わると、弁護士から数日後に支払う予定の給与が未払いになる事、未払賃金立替制度で給与の80%は独立行政法人から支給されること、解雇予告手当については、今後選任される破産管財人において会社の資産の売却等の状況で支払えるか決まる旨が説明されました。

その後、質疑応答が行われます。

従業員にも生活が懸かっています。質問内容は主に給与についてで、立替払いはいつ頃の支給になるか、解雇予告手当はもらえそうなのか、その様な内容が多かったです。

答えは全て弁護士が対応してくれます。

私に直接質問されることはありませんでした。

背中を丸め、涙を流した自分を哀れな目で見ている方もいます。

そして、質問が終わると預けていた鍵等を各責任者から返してもらい閉会となりました。

その際に、数名から「社長、身体に気を付けてね」と声を掛けられました。

私に対して罵声を掛けてくると、覚悟をしていましたが、その様な言葉を掛けられ正直びっくりしました。

おそらく、まだ現実と今後の生活がどうなるか、従業員自体もまだ実感が無かったのだと思います。取り乱す方もいませんでした。

従業員説明会が終わった後、弁護士は各債権者へ弁護士が介入し破産の申し立てを行う旨の通知書を送付、その後裁判所へ「破産手続き開始の申し立て」を行いに行きます。

散会した後、私自身も勝手には事務所には入れません。

帰りの途中、ホームセンターの駐車場に車を停めて欠席した従業員へ一人ひとりに連絡し、破産した事実と解雇通告を行っていきました。

通知書の送付

弁護士から通知はFAXと封書の両方で行っていきます。

欠席従業員への連絡が終わった後くらいから、私の携帯が鳴り続けます。

この時点では、債権者は債務者(私個人と法人としての代表の私)に対して連絡を取ることは出来ます。

直接取り立て等をしない様に通達を出せるのは、「破産手続き開始決定」後に破産管財人が選任され、その管財人弁護士から出される通知書によって初めて法的効果があります。

ほとんどが、電話に出ないだろうけど、とりあえず一回電話してみよう、みたいな感じで、一度きりになります。

中には2日間ずっと電話してくる取引先もいました。

昼過ぎには自宅に帰宅し、妻から「お疲れ様!」と笑顔で迎えてもらい

私は「うん…」と一言返し、ソファーで横になって一休みの時間を過ごしました。

取引先(債権者)の反応

反応はそれぞれです。取り合えず電話に出ないだろうけど一度掛けてみた。何度も掛けてくる。全く、連絡してこない。

弁護士からは、電話に出ない様に言われており私は一切電話に出ません。

出ても、謝る事しか出来ないのと、精神状態が一人ひとり対応できる状態では無いのです。

倒産に至るまで、一度たりとも支払いを遅延していませんでしたので、全くその気配は取引先は感じておらず、かなりビックリされたみたいです。

時期的に閑散期を抜け、業界では新作の商品が続々と入荷している時期でもありました。弁護士にはこれから商品が続々と入荷してくるので少しでも相手方に損害を大きくしない様、商品の発送を停めても良いか打診しましたが、普段と違う動きをする事で相手に感ずかれ混乱が起きる可能性がある為に却下されていました。

本来であればもう少し計画的に申し立て日を閑散期の請求額や納品が少ない時期にしていれば、取引先の損害は小さくできました。

しかし、ギリギリまで何とかしなければという思いで経営者は毎日を過ごしていると思います。

その、根拠のない延命が逆に大きな損害を与えてしまうのです。

本当に、破産の決意は経営者にとって非常に難しい選択と判断であることが身をもって感じました。

 

 

 

倒産当日までの心境と取り立て

心境

①破産を決めるまで

倒産の決断をする事の難しさは連帯保証人なっている社長でしか理解できないと思います。

会社の倒産(破産)=社長自身の自己破産

この呪縛がある限り、常にこの恐怖は付きまとっています。

コロナによる公的な支援や金融機関からの借り入れ等をする場合は、「資産の所有やお金のやり取りに関して法人と経営者個人が明確に区分・分離している事」、とよく目にします。

しかし、倒産となると経営者は会社の連帯保証人となっている事が多い為、結局は一心同体です。

「支援制度を使う際は明確に法人と個人は線引きをされ、倒産したら一緒に破産」これが現実です。

私が決断をした一番のきっかけは、「破産の費用が出せなくなる。」これです。

それまでは、どんな苦しくても「来月こそは!」、「保険を解約して補填しよう」、「個人の資産を入れよう」、「支払いを少し少なくしてもらおう」など何とか延命措置をしていました。

それでも、もうどうにもならない時が訪れます。

一般的にはこの毎月の支払いが迫る、支払いや給与が遅延してくる、この段階が精神的に一番つらい時期なのかもしれません。

給与を払ったら、もう残高が無い…。

従業員の事を考えていない自分勝手な考えかもしれません。

しかし、今月給与を支払えても来月は確実に支払えない状況です。

しかもその時には、破産に掛かる費用の支払いも出来ません。

この状況を冷静に判断できたからこそ、決断できました。

②破産を決めてから

もう覚悟は決まりました。

ここからは、破産申し立ての期日に追われる日々です。

実質、決断してから2週間程しかありません

膨大な資料を集め、それをスキャンしメールで弁護士へ送る日々です。

この時が一番アドレナリンが出て死に物狂いでした。

もちろん、倒産は初めての経験でリアルな体験を聞く事も多くはありません。

初めての言葉、作業、今後の収入、自宅、車、妻の今後とその財産、子供達の転校、家財道具、生命保険、不安な事は次から次へと頭の中に浮かんできます。

私の場合はこの時期が一番苦しい時だったと思います。

しかし、代表取締役として最後の大きな決断と責任を負う覚悟を決めたのです。

自分自身に、「お疲れ様でした」と言ってあげましょう!

取り立て

一般的に会社が倒産する数カ月前から、様々な取引先に対して支払い猶予の依頼や遅延、給与の未払いが起きている事が珍しくありません。

そして直前にはほとんど支払いを止めていて、支払催促の電話・封書・訪問があり精神的にも辛い状況になっている事と思います。

私の会社は全くの逆でした。

支払の遅延が起きる前に破産申請をしたのです。

支払いを遅延していたのは、銀行融資のコロナ特例リスケ・社会保険料の換価猶予申請・消費税の分納とコロナウイルスによる影響を受けた事業者に対する公的な支援を使っていた分だけです。

給与についても一度も遅延や減額で支給したこともなく、従業員もコロナで売上が下がっていても、そこまで危機感は感じていなかったと思います。

取引先からは、毎月の支払額が若干少ない程度でした。

それでも、他社よりは支払いが良いと言われるほど業界自体は大変な状況です。

なので、社内・社外から取り立て等は全くありません。

そう、取り立てが怖くその前に破産という手続きに逃げたのかもしれません。

自分が真面目過ぎたのか、支払いが出来ない状況になっても良い意味で開き直っている経営者もいると聞きます。でも私には出来ませんでした。

なので、資金が足りない状況になってすぐ覚悟を決めたのです。

今後のブログで記述しますが、全く倒産の兆候が無かった事が逆に大騒ぎになる事となります。

破産手続き開始の申し立て準備②

必要情報

「破産手続き開始の申し立て」に必要な情報下記の書類を弁護士から準備する様、下記の通り指示がありました。

まず、現時点での下記の情報。

  1. 現時点での現預金残高
  2. 15日の入金予定額
  3. 25日の給与額とその他の支払い額
  4. 25日までのその他の入出金予定

※なぜ、上記の情報がいるのかは下記ブログの最後の方をご覧ください。

tousantaiken.com

申し立て書類の準備

  1. 株主名簿
  2. 決算報告書の写し(過去5年分)
  3. 預金通帳の写し(過去5年分)
  4. 当座預金取引推移明細表
  5. 本店・支店・営業所の一覧表
  6. 各賃貸借契約書
  7. 原状回復費用の見積もり
  8. 就業規則
  9. 退職金規定
  10. 賃金台帳
  11. 従業員名簿
  12. 滞納公租公課を明らかにする書類(請求書、催促状等)
  13. リース契約書
  14. リース物件一覧表(リース物件の所在等)
  15. 商品一覧表
  16. 買取在庫と委託在庫の区別した一覧表
  17. 保険証券の写し
  18. 出資証券
  19. 有価証券
  20. その他の債権債務一覧表及び契約書(売買契約書、金銭消費貸借契約書等)
  21. その他の債務者一覧表及び契約書

先ずはこの書類等を集めます。

この量でも大変ですが、後に上記の書類からさらに詳しいデーター等の依頼が来ました。

重要なのは、この膨大な資料を従業員に怪しまれずに集めていく事です。

申し立て日まで日数もなく、急がなければなりません。

もちろんこのような書類は、あちこちの書庫やPC内にデーターとして事務所内で保管しています。

私の場合は、日中少しずつ、従業員が帰宅後に一気に事務所内の複合機でスキャンしそれをPCに取り込み、準備が出来た物からメールにて弁護士へ送付していました。

従業員説明会の準備

従業員は破産申し立て日の当日付で解雇通知を出す事となります。

解雇通知というのは、従業員に対して直接通告を出さなければいけません。

その為、一か所に全従業員を集め会社が破産する事によって解雇する旨の説明をする事になりました。

それと、従業員へこのような事態となった理由を会社の代表者である自分の口から直接説明する責任もあります。

遠方に支店や営業所があり、来れない場合や欠席者がいる場合は一人一人に電話で解雇通告を当日中にしなければいけません。

この精神的状況下で従業員に個別に連絡するのは非常に大変な事なので、出来る限り集まってもらい、一度で終わるようにお願いをしていきます。

私の場合は、従業員説明会の前日にまず本社勤務の幹部・各店舗の責任者に連絡し、「会社の今後について重要な説明があるので、各従業員に連絡して〇月〇日の〇時に、〇〇〇〇に集まるように連絡してください。」というような感じで社内に伝えていきました。

また、その際に事務所のカギや各店舗のつり銭など保管している金庫の鍵・その他会社から預けている物を持参するように指示も出しています。

従業員説明会終了後は会社の資産の保全の為、本社・各店舗に入れなくなるためです。

(この時点で察知している従業員もいました…。)

本社・店舗の保全

従業員説明会の準備と同時に弁護士と打ち合わせをしたのは、各事業所の‟保全”です。

従業員説明会終了後に、弁護士から裁判所へ「破産手続き開始の申し立て」を行い、各債権者へ受任通知という、弁護士が介入した旨の通知を出す事となります。

その内容は、「株式会社〇〇〇は裁判所に破産手続きの申し立てを行う事となったので、取り立てや資産の持ち出しをしないように」という忠告文みたいな文書です。

この時点で社外には一斉に知れ渡る事となります。

実はこれ、法的拘束力はなく実際はこの通知が届いた直後に、私の携帯が2日間鳴りっぱなしになりました。

各事業所の資産の保全で、事務所はカギを従業員から回収し、当日の朝、扉に上記と同じ文書を貼ります。

店舗は前日の閉店後と当日の朝にネットをまたはパーテーションを立て、誰も入れないようにしてからそこに同じように受任通知の文書を貼る事となります。

事業所数が多い為この作業は、私と弁護士事務所の職員の総動員で行いました。

現預金の確保

最重要です。

破産申し立ての通知を金融機関が把握した瞬間から、口座が凍結します。

そして、債券(借入金)と相殺されてしまいます。

その後は一切引き出しや資金移動が出来なくなります。

数日掛けて、支払いや入金に使っている預金口座から融資を受けていない金融機関への資金移動と引き出しを行い現預金の保全をします。

ここで気を付けておくのは、個人の口座もです。

連帯保証人である社長は、法人で借り入れをしている銀行の個人口座も凍結・相殺されてしまします。

私の場合、弁護士はこの事をアドバイスしてくれず、わずかな額ですが引き出しが出来なくなりました。

その後、金融機関から口座残高を借入金と相殺したことを内容証明郵便で送られてきました。

一気に残高が減ると金融機関も不振に思うので、少しずつです。

そして、前日に一気に残高を引き出しました。

定期預金も何かと理由をつけて、解約しました。

 

これで、当日の準備が出来ました。

その日に備え、後は覚悟を決めるだけです。

破産手続き開始の申し立ての準備①

1:破産申し立てを弁護士へ依頼

支払不能の状態に陥ったとしても、自動的に破産手続きが始まるわけではありません。

自己破産の手続きを始めるには、裁判手続きが必要となります。

その為に、管轄の地方裁判所に対して、「破産手続き開始の申し立て」という手続きを行うことになります。

「自己破産申請」と混同しがちですが、正しくは「自己破産の申し立て」となります。

裁判所への破産の申し立てを行う際に、会社の資産・負債を一覧にし、添付資料として提出することになります。その資料をもとに裁判所は‟この会社はもう無理なので破産は仕方ない”と判断をして初めて、「破産手続開始決定」という手続きに入ります。

この申し立てですが、通常は弁護士に依頼し弁護士費用を支払うことで出来ますが、債務者(自己破産する個人・法人)本人がする事も出来ます。

弁護士費用がネックまたは捻出できない、場合に検討する事も出来ますがおすすめはしません。

なぜなら、初めての資料作成や手続きで不慣れな中、債権者(返済をしなければいけない個人・法人)に申し立ての通知や連絡の窓口など、代理人がいない中で進めるのはかなりの身体的・精神的負担が掛かります。

破産の決断をした時点で、債権者からの取り立てにビクビクしながら毎日を過ごしている方も多いと思います。

その中で破産の決断をして、手続きを進めていく中で申し立て代理人弁護士がいないとなると、債権者対応も全て自分が行う事となります

自分で全て手続きを進めると、取り立てが収まるのは申し立てを裁判所に行い、その後に破産管財人の弁護士が裁判所からが選任され、その管財人から債権者へ告知書が通知が送付されてからになります。

なので、費用は掛かりますが自分の代理人となる破産申し立て手続きを代行してくれる弁護士に依頼する事をお勧めします。

2:申し立て準備の行動と心構え

会計事務所から弁護士を紹介してもらいましたが、会社の規模や事業所の数、複雑性から三人の申し立て弁護士が付きました。

正確には1人ですが、書類の収集・整理・確認など申し立て日までの日々のやり取りは、部下の弁護士とやり取りをしていきました。

申し立て代理人弁護士が決まり、いよいよ手続きが本格的に始まります。

ここで重要なのは債権者はもちろんの事、取引先・従業員等、周りの全ての方に内密に進めなければなりません。

もし手続きに入っている事が知られると社内は混乱・取引先からは商品の引き上げや問い合わせ等、大混乱になります。

従業員は今まで一緒に事業を支えてきた掛け替えのない方達です。

このような状況下で、平常心でいつも通り接するのは本当に心が痛みます。

後に破産を伝える従業員説明会で、「なぜ一言も相談してくれなかった」と言い寄ってきた人もいました。

その場で私は何も答える事が出来ませんでした。

私の本音は「相談してもどうもしようも無い」、「解決出来たら自分でもうしている」でした。

‟社長は孤独”とよく言いますが、まさにそのような心境で、この苦しみ・不安・支払いが迫る恐怖は体験した人でしか解かりません。

事前に会社が無くなると分かれば、信じていた人でも悪い事を考える事もあります。

会社の備品や商品を持ち帰ったり、レジを通さず売上金を盗むかもしれません。さらに最後の給与が支払われないとなれば、そのような事が起きても不思議でありません。

また、従業員から仲の良い取引先の担当者へ必ず情報が流れます。仲の良い取引先には迷惑を掛けたくないと誰もが考えます。もし情報が洩れれば次々と情報は伝染し、商品や未払い金の回収など社内は大混乱になります。

破産手続きが開始されると、破産管財人が財産を管理し現金化して債権者へ配当という形で分配していく事となります。

その為、弁護士からはまわりに悟られない様、通常通りの行動を取るように言われるのは、財産の保全が一番の理由になります。

3:破産手続きに掛かる費用

弁護士から準備書類の依頼と同時に手続きに掛かる費用が判明しました。

金額を見て驚愕しました…

A社:弁護士費用250万円、申し立て予納金200万円。

B社:弁護士費用20万円、申し立て予納金50万円。

個人:弁護士費用30万円、申し立て予納金50万円。

計600万円

(弁護士費用はこれに消費税も加わります。)

これを事前に納めなければ破産も出来ないのです。

私は2社を経営していた為、費用もさらに膨れ上がりました。

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※予納金とは、破産管財人への報酬が大半を占めます。会社の規模や対処すべき事柄が多いほど仕事量は増える為、高額になっていきます。

現金が完全に無くなってからでは、破産も出来ないのです。