倒産体験日記

倒産社長のリアル体験日記

破産手続き開始決定

 

破産手続き開始決定と管財人の決定

破産手続き開始の申し立てから2日後、裁判所より申し立て弁護人へ通達が来ました。

申し立て書類を裁判所が確認し、この会社は破産する事やむなしという判断がされたことになります。

そして、この日をもって正式にこの会社は破産したことになります。

それと同時に裁判所から破産管財人が任命されました。

会社の資産を保全し、売却等現金化して債権者へ配当の役目を担う弁護士になります。

よく、ネット上では破産管財人は敵とか厳しいとありますが、立場的には裁判所と債務者の中立的な立場にいます。

資産を出来るだけ多くの現金に換え、債務者の自立を考えるのが本来の立場であります。しかし、管財人も人間です。様々な資産の流れや状況について質問される中で、不誠実に対応すると完全に敵になってしまします。出来る限り、誠実に対応を致しましょう。

管財人の決定と同時に、債権者へ今度は「債務者への取り立て」や「資産の持ち出し」、「それらに違反した場合、法に抵触」する可能性がある内容の通知書が改めて送付されます。

そして会社の資産の所有権、私の代表取締役としての権限は全て管財人に移行します。

そう、この時点で私には何の権限も無くなるのです。

また、開始決定の数日後に裁判所から4か月後に第1回目の債権者集会の日時が送付されてきました。

それは、これから破産管財人が資産の売却等を行いその途中経過を債権者へ説明する会となります。

破産管財人との面談

裁判所から破産管財人が選任されると、代理人弁護士と一緒に挨拶・顔合わせにいく事になります。

普段の仕事中の私はスーツを着る事が無く、普段着が多いのですが、第一印象が大事と思い久しぶりにスーツを着て面談に向かいました。

私の場合は、破産管財人と他補助役の2名の計3名の弁護士体制で今後の事後処理を行う事となりました。会社の規模や事業所の数によって、複雑の案件は人数が増えるみたいです。

自己紹介もそこそこに、目の前に並んでいた管財事件の資料ファイルにたくさんの付箋が貼ってありました。すでに破産手続きの決定と共に私が提出した大量の資料中から、気になる箇所にマーキングをしていたみたいで、同席した私側の申し立て弁護士にいくつか、資料の追加や確認しておく事などを指示を出しておりました。

管財人は早口、大きな声だったので若干ビビりましたが丁寧な感じではあったと思います。また、一番の会社の動的資産である在庫の処分をまず手を付ける事を話し合います。

驚くことに、「閉店セールをやりましょう。」でした。

2~3店舗で売上が取れそうな店舗で在庫処分・現金化を兼ねて盛大にやるというのです。

店舗は資産の保全の為にネットを掛け、弁護士からの立ち入り禁止の通知書が貼られている状態です。しかも、その販売を従業員の中から選抜して今すぐ協力できるか私の方からお願いをして欲しいとの事でした。

元従業員といえど、給与を支払えなかった為に私に対する不満・不信感はある中電話をして再度店頭に立って販売のお願いをすることに、大きな抵抗感はありますが管財人からの指示です。従わなくてはならない雰囲気です。

案の定、今までとは違うテンション・口調で‟丁寧”に断られました。

心の中で「そりゃそうでしょ…」。破産した会社の店舗で最後にお客様と顔を合わせる事に抵抗もあります。給与を支払ってもらえない社長の協力は出来ない。会社が倒産したという事で、まだ心の整理がついていない状態です。接客なんて、無理でしょう。

結局、業者に一括で買ってもらう事になり2時間ほどで1回目の面談は終了しました。

取り立て

管財人が選任された後は取り立てをしてはいけないと、上記で記述しましたが正確には「金融機関」のみになる様です。仕入先等の一般的な債権者は、法的拘束力が無いようです。

しかし実際は、この時点で仕入先や業者関係からの電話は一斉に止まり、弁護士介入から2日間、電話が鳴りっぱなしの状態から突然の‟静寂”に変わりました。

破産への不安や恐怖、取引先対応など精神的に一番つらいのは「破産手続開始決定」前であり、その後は驚くほど静かな日がやってきます。

電話が鳴る恐怖・自宅に取り立てに来ないかビクビクしていましたが、この日を境にその心配はいらなくなります。

実際、数名が私の自宅近くをウロウロしたり自宅の写真を撮られたりと、かなり恐怖を感じていた為、少し安堵感が出ました。

今思えば、自宅が融資の抵当権を入れていた為、事前に競売等の現地確認に来たのかもしれません。