倒産体験日記

倒産社長のリアル体験日記

破産申し立て日当日

ついにこの日がやってきました。

X-DAY=破産申し立て日

この日をもって、会社は弁護士介入となります。

膨大な量の申し立て資料、資産の保全、従業員説明会の計画準備を弁護士と入念に行い、当日を迎えます。

従業員説明会

まずは、朝一に全従業員に貸会議室に集まってもらいました。

欠席者は数名と、遠方地の店舗スタッフの10名弱。

コロナ過でもあり、事務所では‟密になる”為に広めの会議室を借りました。

従業員が提示に続々と集まってきます。

私の心境は、胃液が口から吹き出てきそうな感じと申し上げておきます。

出席予定者が全員集まったところで、弁護士から開始の合図があり私の口から本日付で会社は破産する事、それに伴って解雇する事を申し上げました。

私は途中で涙があふれ、言葉が出てこない状況でありましたが、従業員は、ただ静かに聞いていました。

私からの話が終わると、弁護士から数日後に支払う予定の給与が未払いになる事、未払賃金立替制度で給与の80%は独立行政法人から支給されること、解雇予告手当については、今後選任される破産管財人において会社の資産の売却等の状況で支払えるか決まる旨が説明されました。

その後、質疑応答が行われます。

従業員にも生活が懸かっています。質問内容は主に給与についてで、立替払いはいつ頃の支給になるか、解雇予告手当はもらえそうなのか、その様な内容が多かったです。

答えは全て弁護士が対応してくれます。

私に直接質問されることはありませんでした。

背中を丸め、涙を流した自分を哀れな目で見ている方もいます。

そして、質問が終わると預けていた鍵等を各責任者から返してもらい閉会となりました。

その際に、数名から「社長、身体に気を付けてね」と声を掛けられました。

私に対して罵声を掛けてくると、覚悟をしていましたが、その様な言葉を掛けられ正直びっくりしました。

おそらく、まだ現実と今後の生活がどうなるか、従業員自体もまだ実感が無かったのだと思います。取り乱す方もいませんでした。

従業員説明会が終わった後、弁護士は各債権者へ弁護士が介入し破産の申し立てを行う旨の通知書を送付、その後裁判所へ「破産手続き開始の申し立て」を行いに行きます。

散会した後、私自身も勝手には事務所には入れません。

帰りの途中、ホームセンターの駐車場に車を停めて欠席した従業員へ一人ひとりに連絡し、破産した事実と解雇通告を行っていきました。

通知書の送付

弁護士から通知はFAXと封書の両方で行っていきます。

欠席従業員への連絡が終わった後くらいから、私の携帯が鳴り続けます。

この時点では、債権者は債務者(私個人と法人としての代表の私)に対して連絡を取ることは出来ます。

直接取り立て等をしない様に通達を出せるのは、「破産手続き開始決定」後に破産管財人が選任され、その管財人弁護士から出される通知書によって初めて法的効果があります。

ほとんどが、電話に出ないだろうけど、とりあえず一回電話してみよう、みたいな感じで、一度きりになります。

中には2日間ずっと電話してくる取引先もいました。

昼過ぎには自宅に帰宅し、妻から「お疲れ様!」と笑顔で迎えてもらい

私は「うん…」と一言返し、ソファーで横になって一休みの時間を過ごしました。

取引先(債権者)の反応

反応はそれぞれです。取り合えず電話に出ないだろうけど一度掛けてみた。何度も掛けてくる。全く、連絡してこない。

弁護士からは、電話に出ない様に言われており私は一切電話に出ません。

出ても、謝る事しか出来ないのと、精神状態が一人ひとり対応できる状態では無いのです。

倒産に至るまで、一度たりとも支払いを遅延していませんでしたので、全くその気配は取引先は感じておらず、かなりビックリされたみたいです。

時期的に閑散期を抜け、業界では新作の商品が続々と入荷している時期でもありました。弁護士にはこれから商品が続々と入荷してくるので少しでも相手方に損害を大きくしない様、商品の発送を停めても良いか打診しましたが、普段と違う動きをする事で相手に感ずかれ混乱が起きる可能性がある為に却下されていました。

本来であればもう少し計画的に申し立て日を閑散期の請求額や納品が少ない時期にしていれば、取引先の損害は小さくできました。

しかし、ギリギリまで何とかしなければという思いで経営者は毎日を過ごしていると思います。

その、根拠のない延命が逆に大きな損害を与えてしまうのです。

本当に、破産の決意は経営者にとって非常に難しい選択と判断であることが身をもって感じました。