1:破産申し立てを弁護士へ依頼
支払不能の状態に陥ったとしても、自動的に破産手続きが始まるわけではありません。
自己破産の手続きを始めるには、裁判手続きが必要となります。
その為に、管轄の地方裁判所に対して、「破産手続き開始の申し立て」という手続きを行うことになります。
「自己破産申請」と混同しがちですが、正しくは「自己破産の申し立て」となります。
裁判所への破産の申し立てを行う際に、会社の資産・負債を一覧にし、添付資料として提出することになります。その資料をもとに裁判所は‟この会社はもう無理なので破産は仕方ない”と判断をして初めて、「破産手続開始決定」という手続きに入ります。
この申し立てですが、通常は弁護士に依頼し弁護士費用を支払うことで出来ますが、債務者(自己破産する個人・法人)本人がする事も出来ます。
弁護士費用がネックまたは捻出できない、場合に検討する事も出来ますがおすすめはしません。
なぜなら、初めての資料作成や手続きで不慣れな中、債権者(返済をしなければいけない個人・法人)に申し立ての通知や連絡の窓口など、代理人がいない中で進めるのはかなりの身体的・精神的負担が掛かります。
破産の決断をした時点で、債権者からの取り立てにビクビクしながら毎日を過ごしている方も多いと思います。
その中で破産の決断をして、手続きを進めていく中で申し立て代理人弁護士がいないとなると、債権者対応も全て自分が行う事となります。
自分で全て手続きを進めると、取り立てが収まるのは申し立てを裁判所に行い、その後に破産管財人の弁護士が裁判所からが選任され、その管財人から債権者へ告知書が通知が送付されてからになります。
なので、費用は掛かりますが自分の代理人となる破産申し立て手続きを代行してくれる弁護士に依頼する事をお勧めします。
2:申し立て準備の行動と心構え
会計事務所から弁護士を紹介してもらいましたが、会社の規模や事業所の数、複雑性から三人の申し立て弁護士が付きました。
正確には1人ですが、書類の収集・整理・確認など申し立て日までの日々のやり取りは、部下の弁護士とやり取りをしていきました。
申し立て代理人弁護士が決まり、いよいよ手続きが本格的に始まります。
ここで重要なのは債権者はもちろんの事、取引先・従業員等、周りの全ての方に内密に進めなければなりません。
もし手続きに入っている事が知られると社内は混乱・取引先からは商品の引き上げや問い合わせ等、大混乱になります。
従業員は今まで一緒に事業を支えてきた掛け替えのない方達です。
このような状況下で、平常心でいつも通り接するのは本当に心が痛みます。
後に破産を伝える従業員説明会で、「なぜ一言も相談してくれなかった」と言い寄ってきた人もいました。
その場で私は何も答える事が出来ませんでした。
私の本音は「相談してもどうもしようも無い」、「解決出来たら自分でもうしている」でした。
‟社長は孤独”とよく言いますが、まさにそのような心境で、この苦しみ・不安・支払いが迫る恐怖は体験した人でしか解かりません。
事前に会社が無くなると分かれば、信じていた人でも悪い事を考える事もあります。
会社の備品や商品を持ち帰ったり、レジを通さず売上金を盗むかもしれません。さらに最後の給与が支払われないとなれば、そのような事が起きても不思議でありません。
また、従業員から仲の良い取引先の担当者へ必ず情報が流れます。仲の良い取引先には迷惑を掛けたくないと誰もが考えます。もし情報が洩れれば次々と情報は伝染し、商品や未払い金の回収など社内は大混乱になります。
破産手続きが開始されると、破産管財人が財産を管理し現金化して債権者へ配当という形で分配していく事となります。
その為、弁護士からはまわりに悟られない様、通常通りの行動を取るように言われるのは、財産の保全が一番の理由になります。
3:破産手続きに掛かる費用
弁護士から準備書類の依頼と同時に手続きに掛かる費用が判明しました。
金額を見て驚愕しました…
A社:弁護士費用250万円、申し立て予納金200万円。
B社:弁護士費用20万円、申し立て予納金50万円。
個人:弁護士費用30万円、申し立て予納金50万円。
計600万円
(弁護士費用はこれに消費税も加わります。)
これを事前に納めなければ破産も出来ないのです。
私は2社を経営していた為、費用もさらに膨れ上がりました。
※予納金とは、破産管財人への報酬が大半を占めます。会社の規模や対処すべき事柄が多いほど仕事量は増える為、高額になっていきます。
現金が完全に無くなってからでは、破産も出来ないのです。