事業内容
A社
- 業種:小売業
- 年商:3億弱
- 負債:2億
- 従業員数:約40名
- 店舗数:10店舗程
- 創業:50年弱
B社
- 業種:小売業
- 年商:3000万円
- 負債:800万円
- 従業員数:0
- 店舗数:1
- 創業:10年
私は元々B社を経営しており、その後A社を引き継ぎました。
資本関係はなく、A社とB社の事業内容は取り扱いブランドが異なり、引き継いだ後の実質の運営は一体で行っていました。
私が入社した時代から、業界全体はショッピングセンターの乱立や消費税の増税・EC市場の拡大と時代が次々と変わり、自社はそのスピードの変化に対応できなくなっていきました。自社の商品の顧客層が年配向けという事もあり、ECサイトなど新たなマーケットの開拓を早い段階で出来ていれば、その後の事業の方向も違っていたかもしれません。
業績は毎年じわりじわり右肩下がり。
それでも近隣のライバル店と比べても売上が高く、仕入先との取引条件も長年の付き合いの実績もあり、好条件で商品を取り揃える事が出来ていました。
しかし、売上が取れても固定費が高く、利益が出なければキャッシュフローは確実に支払い不能へと進んでいきます
売上<利益
「売上を追いかけるより利益を追いかける。」
この意識が経営者として薄かったのかもしれません。
月末が近づくにつれて、経理責任者である母が大きなため息と、「お金が無い」と念仏のようにブツブツ言っていたのを思い出します。
両親の死
そんな中、創業者社長でもある父が末期がんで余命3ヶ月の宣告を受けます。
抗がん剤治療が順調で闘病生活は2年半となりましたが、とある年末の少し前に他界しました。
父が余命宣告を受けてから、息子である自分が何の迷いもなく会社を継がなければという意識はもちろんありました。まだまだ経験が足りていませんが、長年父と二人三脚で金庫番をしていた常務の役職であった母がいて、不安はそんなにありませんでした。
しかし会社のナンバー2でもあったが母にも信じがたい事が起きます。
父の死後、年末に代表者変更に伴う様々な契約変更、連帯保証人引継ぎ等を私と母は一緒に年内に終わらせ、年が明けた仕事始めの日にインフルエンザに罹りその1週間後に亡くなりました。
人が無くなると様々な個人の手続きや作業が膨大に発生します。
しかも、会社の代表者となればその手続きも何倍にもなります。
様々な手続きによる負担・息子が赤字会社を引き継ぐことへの不安や心配、これらの心労は尋常ではなかったと思います。
その際に罹ったインフルエンザに対抗できる体力が無くなっていたのかもしれません。
父が亡くなって2カ月も経たない内に母も亡くなり、社長と常務の会社のTWO TOPが2カ月でいなくなるという事態に見舞われます。当然社内・取引先は大混乱に陥ります。支払日や引落日、給与計算から何から何まで誰もわからず葬式の準備と同時に会計事務所と連動しながら会社の日々の業務の洗い出しを不眠不休で行っていました。
とある仕入先は担当者と役員が来て、香典を渡された直後に決算書の開示を求められることもありました。(その後腹が立ったので取引を減らしました)
そんな中でも多くの厚意を頂いた取引先のご理解も得ながら、2か月後には何とか落ち着きを取り戻し、日常業務に戻っていく事なります。
新型コロナ
元々財務状況が厳しい会社で経験不足の私が日々奮闘して月日が流れていきましたが、実店舗のみ・年配向け商品の事業会社が2020年の新型コロナウイルスに伴う外出制限の影響をもろに受け、業績がさらに悪化。
銀行のリスケ・社会保険料の換価猶予申請・消費税の分納等あらゆる資金流出の手を打ちましたが、とある月明けに月末支払が完全に不能であることが判明した時に、完全に心がポキッと折れました。(本当に鳴った気がします…)
すぐに、会計事務所に連絡を入れ、その翌日に弁護士を紹介してもらいました。
決算書・直近の試算表・資金繰り表を確認してもらい、事業の継続は無理と判断。
いわゆるX-DAY*1をいつにするかを協議をし、25日に給与の支払いをすると弁護士費用の財団債権*2や税金等の優先債権*3の支払いが出来なくなる事から、25日前にすることが決まりました。
さあ、心は決まりました。
残された日数は多くありません。
大至急、破産の手続へと進んでいく事となります。